「膝関節の理学療法」Q&A

「膝関節の理学療法」にご参加いただいた皆さまからの質問にお答えします!

Question12 

TKAでもロールバッグが必要というお話でしたが、 周囲軟部組織の柔軟性を出すことでロールバッグが生じるのでしょうか? 人工関節が入っていると副運動はその関節面に依存し生理的な運動は難しいと思っておりました。膝関節の内外旋や脛骨の前方への引き出しの誘導は問題無いでしょうか? 脱臼や関節の緩みが生じてしまう事はないでしょうか?

 

 

Answer

基本的に人工関節はポストカム機構や後十字靭帯の緊張を使って、ロールバックを誘導するように設計されているので、軟部組織や筋緊張が正常な状態に保たれていれば、自動的にロールバックが起きるはずです。ロールバックが起きないと人工関節は100度程度までしか曲がりません。なので、軟部組織や筋緊張を正常化して自動的にロールバックが生じるようにしておくことが重要です。

また、徒手的に脛骨を前方へ引き出してロールバックを誘発する操作は、ごく軽い操作で脱臼を誘発するほどは力は入れませんから問題はないはずです。回旋の誘導も同様です。この場合の回旋も、軟部組織の緊張が良好な状態に置かれれば、大腿骨顆部の形状によって自動的に誘発される動きなので、軟部組織の緊張状態を改善すれば、自動的に起きる動きです。 軟部組織の伸張性を改善する程度の力で回旋を他動的に行うので、人工関節の緩みは起きないと思います。 むしろ、この自動回旋が制限されている状態で無理矢理に膝を曲げれば、必ずどこかの組織に過剰な伸張ストレスが加わるので、そこの組織が過剰に引き延ばされて、緩みが生じる危険があります。 ですので、関節弛緩性を作り出さないためにも、適切な回旋が誘導されることが重要です。