「股関節の理学療法」Q&A

「股関節の理学療法」にご参加いただいた皆さまからの質問にお答えします!

Question9

骨盤をコントロールする上で、多裂筋と腸腰筋の機能が重要な事は理解しました。

大腿骨転子部骨折術後の患者様で、小転子が飛んでしまい、腸腰筋の機能が使えない症例について質問です。この場合、腸腰筋が効かず、立脚後期が出ない、体幹のコントロールが上手く出せないといった問題が生じます。

こういったケースでは、どのように考えていくべきでしょうか。アプローチや考え方をご教示頂ければ幸いです。

 

 

Answer

腸腰筋と多裂筋は、マストを支えているワイヤーロープのように腰椎を4方向に引っ張って、腰椎を支持しています。

4本のワイヤーロープは、同じ張力でマストを引っ張らないとマストを支持する事ができません。よって、体幹を支持している左右の腸腰筋、左右の多裂筋の計4つの筋も同じ張力で作用し合うように調整がなされているものと推察されます。

1側の腸腰筋が効かないと言う状況にある際に、骨盤と腰椎のアライメントを制御するためには、残りの3本の筋で骨盤の動きを制御させるしかありません。

大腿骨頭上での骨盤のアライメントは、健側の腸腰筋と多裂筋とでコントロールしつつ、患側の多裂筋を賦活化させて、骨盤を前傾させ、患側の股関節を安定した位置に置けるように動作練習を行います。

 

もう一つのご質問の立脚後期にどう代償させていくかは、けっこう難しい。

立脚後期に股関節をしっかりと伸展させていくためには、どうしても腸腰筋の遠心性収縮が必要なります。これが使えないとなると、立脚後期に大腿が伸展していくに従い、骨盤を前傾を強めて股関節が伸展位にならないように代償し始めます。これだと腰への負担が大きすぎる。なので、ある程度許容される範囲で、骨盤前傾を強めて代償しつつ、足りない分を大腿直筋や筋膜張筋で代償させるしかないでしょうね。

お年寄りであまり活動性が高くない人の場合は、歩幅をあまり大きく取らない歩行パターンで歩いてもらう。または、杖ですね。杖があれば、重力で股関節が伸展されていくのにブレーキをかけられるので、腸腰筋が効かなくても、杖で代償ができます。