「歩行のバイオメカニクスと理学療法」Q&A

「歩行のバイオメカニクスと理学療法」にご参加いただいた皆さまからの質問にお答えします!

Question4

膝OAに対する外側ウェッジの効果がエビデンス的にほぼないというお話でしたが、差し支えなければその根拠となる資料や文献を教えていただけないでしょうか?

 

 

Answer

変形性膝関節症 理学療法診療ガイドラインでは、足底挿板についてのエビデンス  推奨グレード B エビデンスレベル 1 となっています。以下が根拠となる論文です。

私も歩行中の関節モーメントと内反角度について計測を行いましたが、変化がなかったという内容を大昔に論文に書きました。

 

・1 か月の外側ウェッジ足底板の使用は、膝関節内転モーメントの減少を示さなかった。 そのため、膝関節内転モーメントに対する短期的効果はない(Hinman RS. 2009.)。

・外側ウェッジ足底板とアンクルサポーターの同時使用は、内側コンパートメントの負荷もしくは下肢のメカニカルアライメントの改善効果は認められなかった。外側ウェッジ足底板の使用による疼痛減少と日常生活活動の改善は、アンクルサポーターを使用することによって臨床的有益性が弱まる可能性がある( Segal NA. 2009)。

・歩行シューズと外側ウェッジ足底板を着用して歩行すると、歩行中の膝関節痛を軽減する (Barrios JA. 2009. )。

・内側膝 OA において、足部回内装具(禁忌がないとき)は、とくに NSAIDs 消費の減少において推奨される。しかし、今日に至るまで、構造的または機能的に影響を与えるエビデンスはない。膝または股OAの治療において足部装具の処方に対する有効な指標はない(Gélis A. 2008.)。

・外側ウェッジ足底板は、踵を覆う靴下を着用すると効果が減少する (Toda Y. 2008. )。

・外側ウェッジ足底板は、膝 OA 患者の歩行改善や膝関節痛の軽減する (Zhang W. 2008.)。

・K-L 分類1と2の膝OA患者に対する外側ウェッジの使用は、運動学的・運動力学的に好影響を与える。膝OA重症度の初期および中等度の膝OA患者に対する外側ウェッジの使用を支持する (Shimada S. 2006. )。

・外側ウェッジ足底板の使用に関して、長期的効果はない (Reilly KA. 2006. )。

・距骨下ストラップ付足底板のFTA改善に対する治療効果は、一日5から10時間使用すると効果がある(Toda Y. 2005. )。

・外側ウェッジ足底板は、着用6か月後および24か月後ともに疼痛の軽減が認められた。また、ストラップ付足底板では、着用6か月後および24か月後ともにFTAの改善が認められた。ストラップ付き足底板は、下肢のアライメント調節効果がある(Brouwer RW. 2005. )。

・外側ウェッジ足底板は、膝OAの膝関節痛の減少に応用できるとしている(Marks R. 2004)。

・外側ウェッジ足底板の効果を疑問視する論文がいくつかあるが、欧米人の家屋内での靴を履く習慣により、足底板の効果を減弱させている可能性がある(戸田佳孝. 2010)。

・ストラップ付足底板と支柱なし制動用サポーターの併用が有用であるとしている (戸田佳孝. 2009.)。

・ストラップ付足底板とヒアルロン酸製剤の併用による相乗効果が期待できるとしている(戸田佳孝. 2006.)。